マクドナルドで、経理パーソンとして管理会計に出会う


公認会計士の梅澤真由美です。
わたしは28才のとき、日本マクドナルドに移り、経理の仕事を始めました。

当時のマクドナルドは、日本中に約4,000近いお店がありました。部門別PLの数が日本一多い会社だったのではないかと思います。お店の状況を正しく把握するために、経理のベースには管理会計がありました。

日本と米国の会計基準に加えて、会社独自の管理会計のルール。この3つの会計の知識を持ち使いこなせることが、マクドナルドの経理パーソンの大事なスキルとされていました。そのため、部門全員を対象にペーパーテストが行われ得点順位を競う、まるで高校生のような取り組みがあったのも、懐かしい思い出です。

とはいえ、経理パーソンとしての日常の仕事の内容や時間の使い方は、他の会社と大きな違いはありません。公認会計士としての4年間で見てきた、たくさんの会社の経理と同じでした。

各部門に伝票を早く入れてもらうようにお願いしたり、「会議に使うから」と、数字を明日までに出してほしいと頼まれたり。さらには、財務部門だけで60人程度の大所帯だったので、会議のためのスケジュール調整や議事録つくりなど、時間がかかる作業もたくさんありました。

管理会計の前向きさとやりがいに、心魅かれる


マクドナルドの経理パーソンとして過ごす日々のなかで、わたしがもっとも心を魅かれたのが、管理会計を使って未来を見通すことでした。

「プロジェクション」と呼ばれる業績予想を、決算よりも前に作ることで、どのような業績になりそうなのかを事前につかみます。
つまり、いざ決算を締めてから、その業績に一喜一憂したり、説明を考えたりする必要はありません。また、利益が期待よりも足りないと、請求書の束を再点検して間違いを探す会社もありますが、そのような事後的で不毛な作業に、いらだちを覚えることもないのです。

さらには、事業部門と一緒に取り組むプロジェクトが多いことも、正直なところ会計よりも事業に興味がある私にとっては、大きなやりがいでした。
利益が足りないなら追加でキャンペーンを入れたり、逆に利益が多めに出そうなら将来にも役に立つ支出を考えたり。
事業に近い場所でたくさんの人と一緒に仕事ができること、そしてその結果が多くの人や事業や会社の役に立てることに、よろこびを感じました。

数字を変えられる未来志向の管理会計は、会計士だからこそあえていうなら、「合法的な粉飾」だと思っています。
経理にとって、業績を変えることはいけないことという印象が強いものです。しかし、管理会計は、前向きに未来を変えることができるツールなのです。

管理会計をもっと学びたいと考えたわたしは、管理会計の先進企業であるウォルト・ディズニーの日本法人に移りました。そこで、本場米国の管理会計を、5年のあいだ管理職として経験しました。
2015年の上海ディズニーランド開業に合わせ、中国進出のための日中米三か国プロジェクトにも参加しました。いろいろなバックグラウンドを持つメンバーとのやりとりの中でも、管理会計は国や仕事内容を越えても大いに役に立つことを、強く実感できました。

「理論と実務のあいだ」を、すべての学びたいひとに届ける


そして、2016年から現在まで、「管理会計実務」にこだわり、情報を発信し続けています。

きっかけは、これまで話したように会社で管理会計の仕事を行うなかで、実務にすぐに使える情報を見つけられなかったことです。「どの本も理論をくわしく書いてあるけど、実務にどうやって落とし込むのかは教えてくれない」。本当は、それが知りたいのに。

公認会計士という会計のプロのはずの私でさえ、試行錯誤を繰り返し、先が見えない四苦八苦の日々が、当時しばらく続きました。同時に、もっと大変な思いをしている人もたくさんいるのではないか、とも感じました。
自分が苦労して見つけた管理会計を実践スキルを体系的に届けたい、そう考えたのです。

セミナーを受けた方からは、「実務に役立つ情報が聞けた」という声を多くもらい、本当に励みになります。
しかし、その一方で、ずっと気になることがありました。
平日昼間に開催される多くの公開セミナーでは、就業時間や会社の予算などの制約から、希望する皆が受けられるわけではありません。また、大都市中心の開催では、地方の方が参加することが難しいはずです。
会社勤務や地方出身という自分自身の経験から想像しても、学びの機会をまだ十分には届けられていないと感じていました。

オンラインで学び、自分のスキルとキャリアをつくる

 
この思いから、2021年初めに当社でオンラインスクールをはじめました。この「管理会計スクール」です。
 
新型コロナウイルスの感染拡大により対面セミナーが中止になったことが、私の背中を押しました。どのような状況においても、工夫して努力して、経理パーソンのみなさんは経理業務を続けていました。「その中で知識が必要になる方もいるだろう、その学びを止めてはいけない」と考えたのです。
 
オンラインという形にしたのは、私自身の経験からです。ウォルト・ディズニー・ジャパンに勤めていた頃、大半の授業をオンラインで受講するかたちで、オーストラリアのビジネススクールでMBAを取りました。忙しくプレッシャーのきつい外資系管理職をやりながら、広い経営知識を身につけられたのは、オンラインだからこそだったと思います。


自分にとって無理のないやり方を選んだことで、必要だと感じたそのときに、諦めずに学ぶことができました。そのおかげで、自分自身のキャリアを広げて、現在は複数の上場会社の経営を社外取締役として担っています。


自分の状況や興味、必要度合いに応じて、スキルを身につけ自分が望むキャリアを積むために、オンラインという手法はとても役に立つと確信しています。


管理会計スキルは、自分の大きな道しるべになる


管理会計のスキルは、経理にとって最大のポータブルスキルです。

汎用性が高いので、転職などで会社を替わったら使えなくなってしまうものではありません。
また、会計基準の改訂のような変化を受けないので、一度身につけてしまえば、長いあいだ活用することができます。
さらに、日本では、管理会計を活用できる人材はもちろん、管理会計がわかる人材も足りないため、相変わらず引く手あまたの状況です。

私自身、経理パーソンとして管理会計を知り身につけたおかげで、仕事の楽しさややりがいを数多く感じることができました。
生成AIをはじめ変化が大きいこの時代だからこそ、コミュニケーションやカスタマイズを柱にする管理会計は、経理パーソンにとって強力なスキルのひとつだと思います。


管理会計スクールでは、管理会計に興味をもった方に向けて、入門講座を無料で公開しています。
いつでもどこでも、学びたいことから、ぜひご自身のための学びをはじめてみてください。

管理会計スクール代表 公認会計士 梅澤真由美


公認会計士、管理会計ラボ㈱代表取締役
2002年から監査法人トーマツにて監査に従事したのち、日本マクドナルド㈱およびウォルト・ディズニー・ジャパン㈱の2社で通算10年間勤務。経理・予算管理・経営企画など幅広い分野にて、スタッフから管理職まで経験。2016年より、管理会計ラボ㈱にて管理会計の教育事業を行う。
静岡県沼津市出身。京都大学農学部卒業、ボンド大学ビジネススクール修了(MBA)。
ロイヤルホールディングス㈱をはじめ、複数の上場会社の社外取締役もつとめている。